アマゾン店担当者です。この記事は9月中旬ごろに書き始めたのですが、今頃の投稿になったので季節は少しずれています。
夏をアピールする蝉の鳴き声もすっかり息を潜め、聞こえてくる虫の音色は秋模様となりました。日が落ちるのも早くなり、気温も下がってようやく過ごしやすくなってきましたね。そんな中、以前から調子の悪かった給湯器が完全に壊れました。夏の間は水シャワーで全く問題が無かったのですが、さすがに9月も中旬を超えてくると少し厳しくなってきます。交換を依頼するも、最短でも1週間以上は要するとのこと。「つばきの湯」という立派なスーパー銭湯があるのは勿論知っていましたが、確か東海道沿いに銭湯の暖簾を見た記憶がある。これは良い機会じゃないかと思い、オルトリーブのQRシートパックに石鹼やタオルを詰め込んで出発することにしました。

水口宿は三筋が特徴で、ここは西側の三叉路。ここから右側の路を進んでいきます。正面にあるからくり時計は今も現役で動きます。

清水湯さん到着。辺りはとても静かだ。

自転車は隣のスペースに停めて良いとのこと。この奥から木の良い香りがしました。どうやら燃料におがくずを使用されているらしく、その香りのようだ。


大正時代から続けられているとのことで、ロッカー(といって鍵はかからない)やマッサージチェアはとても味わいがあり歴史を感じさせるものでした。シャワーの水圧は弱く蛇口は赤と青の年代物レバーで7か所のみ、浴槽は1つ。あとは椅子とケロヨンの桶。そりゃ大正時代から続いているので設備の古さは否めませんし、新しい銭湯に比べたら機能的に物足りないことは多いのかもしれません。しかしながらしっかりと手入れは行き届いていることは随所に感じ取ることが出来ます。このマッサージチェアも現役で動くとのこと、素晴らしいじゃないですか。私が入る時に既に一人先客がおられて、少しお話しも出来ました。それ以降は3名来られて、皆様番台さんの対応を見る限り常連さんだと思いますが、だからと言って疎外感は全く覚えませんでした。しかしロッカーが20箱ありますが、あの湯船に20人はキャパオーバーな気がする。湯船が満員御礼の場合、数人は身体でも洗っとけということなのか。


ひとっ風呂浴びたのでIRCのタオルをオルトリーブのシートパックに詰め込んで帰る準備をする。番台さんによると、昔はこの地域に5つほどあった銭湯も今や最後になってしまったとのこと。そう言えば先輩方も昔はこのあたりは栄えてて銭湯もいくつかあった、仕事終わりに奥様とよく銭湯に行ってたと仰ってたな。


話は変わりますが、神戸の六甲にある好きだった「洋食の店 自由軒」が閉店し


子供の頃によく利用していたパン屋さん「青谷ベーカリー」も閉店しました。貼付された利用者からの感謝のメッセージに共感し、在りし日の青谷ベーカリーのあった日常を思い出す。この頃は自由軒も青谷ベーカリーも存在するのが当たり前だと思っていた。馴染んだお店はいつもそこにあるように思うけど、それは勝手な期待に過ぎないのでしょう。今は頭では理解できる、しかし理解しても喪失感が消えることはありません。



青谷ベーカリーすぐ近くにある「LARGO」の窓から青谷ベーカリーを眺める。LARGOさんは神戸市バス2系統と18系統の青谷駅の目の前にある喫茶店。小学生の頃、習い事の為にこのバス停をよく利用していました。かつては自分がバス停側から窓を覗く側で、今はバスに乗る人を眺める窓の向こう側にいる。いつか入ってみたいなと思いつつ漸く叶ったが、まさかシャッターを下ろし歴史に幕を閉じた青谷ベーカリーの建物を、かつて憧れた窓の内側から眺めることになるとはな。この近くには横に和菓子屋さん、雑貨屋のチロルや須賀さん、通っていた書道教室、お使いに行っていた豆腐屋さんやパン屋のマルイとエルム、本屋のブックスファンドやさりぽろというラーメン屋など色々な記憶はありますが、もう全てありません。「馴染んだお店はいつもそこにあるように思うけど、それは勝手な期待に過ぎない」この台詞をくれた人ももうこの世にいない。今年は本当に人も心の風景も多くの馴染みを失うな、そんな感傷に浸っているとバスを待つ小学生2人がこちらを覗いてきて、目が合った瞬間笑いながらにらめっこを仕掛けてきた。こちらも勝負に乗ってみたものの程なくして2系統のバスがその束の間の戯れを引き裂きましたが、その僅か1-2分が少し心を軽くしてくれました。素敵な時間をありがとう。

色褪せていく思い出の中の風景に一つ色が塗れたような気がした。今度はマスターとじっくりお話しして、もう少し色を足したいと思いつつLARGOさんを後にする。

清水湯さんからの帰り。昔は多くの人の往来があったという東海道も、私は寂れた景色しか知りません。昔はお店だったんだろうなという名残はまだいくらか見受けられるものの、もう殆どが住居に変わっています。昔の賑わいを知っている人はその移ろいをどう感じているのだろうか?そんな中で今も営業されておられる清水湯さん。大正時代の方と同じ経験が出来たのだなと思うと感慨深く、給湯器は使えるようになったものの、またタイムスリップした感覚を味わいに行こう、そして次はマッサージチェアに座ってみようと思いつつ自転車を漕ぐ。帰りがけに番台さんとお話した時にまた来てやと言われたしね。口約束だけにならないようにしよう。湯船に浸かっている最中に爆音で演歌みたいなのが聞こえてきたりと謎な現象(あれはお決まりなのか?)もありましたが、楽しかったな。
ずっと同じところに住んでいても、違う道に出たら案外知らない世界があったりします。そんな時、自転車ならば歩くよりも格段に機動力が上がるので、歩きならばちょっとやめとこうかなという迷いも払拭できることも多いのではないでしょうか。「あの曲がり角の先を見てみたいという微妙な距離も、ひと漕き二漕ぎで到達できる機動力は冒険的な旅が加速する気がします」これはお会いしてお酒を呑むことが出来たお客様からいただいた言葉ですが、自動車では入れないような路地裏でも自転車ならば気軽に踏み込めたりします。昔住んでいたところを走るのもいいでしょう。小さな時とはまた違った街並みになっていることもあるでしょうし、同じであっても当時気づけなかったことに気づいたり理解したりと懐かしくも新しい発見があったりするものです。自転車はモーターバイクや自動車を持つと乗らなくなる方もいらっしゃるでしょうが、自転車は自転車の魅力がありますので、今一度童心に帰ってお乗りいただくのも面白いと思いますよ。

















